
地球上にはアッと驚くような壮大で美しい地形が存在します。
そしてその絶景に感動し、そのあと頭に浮かぶことといえば…。
どのようにしてその地形ができたんだろう?どうしてこのような不思議な形や色合いになっているのだろう?というような疑問ではないでしょうか。
美しい写真とともに、その疑問を詳しく解説してくれているのが『美しすぎる地学辞典』です。
実際にその場所に行かなくても、十分に迫力が伝わってくる写真が満載です。
自然が作り出した絶景に興味があり、さらにその成り立ちまで詳しく知りたい方におすすめの辞典です。
本の基本情報
タイトル:美しすぎる地学辞典
著者 :渡邉克晃
発行 :秀和システム
著者の渡邉さんは、地球科学コミュニケーターとして様々な活動をされておられます。この『美しすぎる地学辞典』は美しい景色を見ながらお子さんと一緒に科学を楽しむ機会になれば、という思いで出版されたとのこと。(筆者プロフィール、はじめに、より)その思いが伝わってきます。
本から得られること
世界の中でも美しい景色48か所についての解説、水分子の結晶、ビスマス人工結晶について、の合わせて50のcontentsから成っています。
驚きの絶景
まずは何と言っても地球上にはこんなにも雄大で美しい場所があるんだ!と驚かされます。グランドキャニオンのような有名な地形、そしてあまりまだ知られていないような絶景まで、本当に盛沢山です。
写真がとても美しいので、まるで実際に近くの展望台から見ているような感覚になります。
地形の形成史
不思議ともいえる地形が、いつの時代の活動によるものでどのような条件下で形成されたのか、そしてその後の浸食活動を通して現在の地形を見せるまでの工程、を知ることができます。岩石、地形などに関わる用語の説明もその都度あり、地球科学、地球の歴史、また化学反応についての基礎も学べます。
結晶について
水分子、ビスマス人工結晶の美しさや面白さを通して、鉱物の元となる結晶の化学が学べます。
☆印象に残ったポイント☆
面白い内容がぎっちり詰まっていますが、その中で印象に残ったポイント3つをご紹介します。
縞状鉄鋼層(content13)
現在鉱業的に使用されている鉄鉱石の大部分は縞状鉄鋼層から採掘されています。縞状鉄鋼層は先カンブリア紀の限られた時代、鉄が多く溶けていた太古の海で生成されました。縞状鉄鋼層の形成は18億年前に終わっていて、現在、未来もう形成されない岩石の絶滅種、ということになるそうです。
絶滅種と言えば、マンモス、恐竜などが思いつきますが、鉱石にもあるんだな、と感慨深い気持ちになりました。
オーストラリアかつての山脈(content46)
オーストラリアといえば、広大であまり高低差がない地形という印象です。実際に最高峰は2,228mのコジオスコ山、日本では群馬県にある至仏山が同じ標高。しかしかつて(約6億年前)オーストラリアの中央部には8000m級の山々がそびえていたと考えられているそうです。さぞかし見事な景観だったのでしょうね。
クリスタルの洞窟(content20)
10mを越える巨大な結晶が立ち並ぶナイカ鉱山、なんと50万年もの間地下の熱水の温度がほぼ一定に保たれてきたおかげの産物だそうです。
日本は季節により、また一日における気温変化もはっきりしているので、それを考えると本当に不思議な感覚を覚えました。
まとめ
それぞれのcontentが写真を含めて4ページにまとめられており、とても読みやすいです。引き込まれる内容でますます地学が好きになります。探究心を持つことの面白さ、一歩踏み込んで学ぶことの楽しさも伝わってきます。
著者の渡邉さんは、地球科学系のWEBサイト『グラニット』も運営されており、こちらもおすすめです。
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